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| 話屋、100のお題ver. |
少し加速させたいので一挙二話公開です。 100のお題、No.6とNo.7、『庭』と『星』。 感想、ご意見、お待ちしています。
6、庭 【にわ】
「無いですねぇ。」 ───ですね。 俺たちが話しているのは店の裏側・・。 そう、そこには積み上げられた、何処から来たかも解らない材木しか無かった。 「この木は・・私が此処に来たときから在りますね。」 なんという年代物。 ───本当に此処は味気がありませんね。 「まぁ、店でお話するだけですしね。」 最近の会話は割とぶっちゃけた話な気がする。
「そうそう、理穏君、箱庭には興味ありますか?」 場所は店内に移って、今日のお茶は温かい緑茶でした。 ───いえ、・・と言うか、今聞くまでそんなこと考えたことも無かったです。 と、俺は帳さんの質問に素直に答える。 「箱庭って素敵だと思いませんか?自分の・・もしくは他の方の庭を、好きなときに眺められるんですよ?」 その素敵さがいまいち解らない俺は曖昧に頷き、帳さんが話すのを期待してお茶を啜る。 どうやらちゃんとした煎れ方らしい。普通より断然美味しい。 「・・・尤も、此処には必要ないですね。私も大して見たことありませんし。」 ───そう言えば、帳さんは此処にどうやって来たんですか? 先ほどからちらちらと見え隠れする元の世界の話、戻りたい自分としては聞いておいてそんは無いだろう。 「・・そうですね・・では、まず此処の存在意義から・・話しましょうか。」 ───意義・・ですか。 「そう、此処はもう知っての通り、話を聞き、する・・『話屋』です。・・でも此処は誰の為に在るのでしょう。・・正解は・・」 ───今・・過去・・そして、未来に問いを持ち、答えを探している人の為・・。 前に聞いた台詞を言う。 「です。・・では、此処は何処に在るか・・。それは、何処にでも在る・・ですね。」 ───? 「此処は『箱庭』・・・。誰しもが、好きなときに眺め、・・何処かへ仕舞ったまま忘れ、ちょっと思い出したときにまた眺める・・そんな場所です。」 そう言うと帳さんはお茶を飲み始めた。答えは酷く曖昧だった。
『ズズッ・・』
静かに響くその音は耳に残らず白に消えていった。 「まぁ、眺めても『見えない』方はいらっしゃいますがね・・。」
7、星 【ほし】
時計的には夜。 朝、昼、夜・・なんて観念をぶち壊すこの世界に勿論太陽や星、月なんてない。 ただ白く果てしなく続く『天井』が在るだけ。 俺は今店の裏で横になっている。 特に寒くもない・・と言うかずっと気温が変わらない此処では何処で寝たって、寝心地の良さを追求する程度にしかならない。 仰向けに寝転がった俺は無駄にも『天井』を見つめていた。 ───果ては・・在るのか・・? ゲレンデでも無いのにホワイト・アウトを食らって良く見えなくなってきた目を擦りつつ、そんなことを呟く。 ───決して終わらないモノは・・無い・・。 俺はそう信じてる。 「まぁ、人それぞれですからね。」 最初と同じように独り言に急に入ってくる帳さん。 「何でずっと見つめてるんです?」 同じように『天井』を見上げ、これまた同じようにホワイト・アウトを食らった帳さんは目をしょぼしょぼさせている。 ───始まりと終わりって対極だと思いますか? 「そうですね。私はあまりそうだとは思いたくありません。」 帳さんの答えは逆に肯定している言い方だった。 「始まりは終わりへと向かい始めることです。また、終わりは始まりへ向かおうとすることです。尤も、それは輪廻転生のような物を信じているならの話ですけどね・・。」 宗教等に全く興味のない今時な日本人だった俺でもその言葉は聞いたこと、意味を掠る程度には知っていた。 簡単に言えば死んだら廻って別の命となる・・と言うのが繰り返す・・と言う物だ。 「ただ、」 帳さんにしては珍しく重く、鋭い言い出し、 「1人の人を構成する物質は恒星としての寿命を最低3回は経ている・・・と言われています。こんな話を聞くと『輪廻』と言う物を信じてみたくなりますよね。」 この台詞で帳さんは店へと入っていった。 全く、問題を出すのが好きな人だと思いながら腰を上げる。
人は死んだら星になるのだ。母親に言われた。 人は生まれる前星だったのだ。帳さんが言った。
人の始まりは何処だ?
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| 話屋、100のお題ver. |
話屋、100のお題ver. 第5話。
5、道路 【どうろ】
そこには何も無くて、 目の前はただ、白く染め上げられている。 迷子の子供のように、 自分が何処へ向かうのか解らない。 ───尤も、向かうべき場所がないしなぁ・・・。 目の前は白、 後ろには一軒の店・・・。 俺が居るのはそんな『在り得ない』所。 故に俺は探す、 自分の行くべき場所を、 そこへ導いてくれる、路を。
「・・・そんな肩に力入れてたら・・疲れちゃいますよ?」 店の前で気合いを入れていた俺に帳さんはそう言う。 ───・・まぁ、決意表明って事で。 申し訳程度にそう言い訳し、店の中に戻る。 今俺はこの世界で、『話屋』の手伝いをしている。 勿論、話す為ではなく、あくまで掃除とかの雑用・・。 ただただ、目の前の現実を受け止め、過ごす。 「理穏君は・・受動的すぎるって言われたことあります?」 突然帳さんが聞いてきた。 少々面食らったモノの、俺は正直にある・・とだけ答えた。 「・・理穏君は他人の創った道路を走る車みたいな方ですね。」 ───機械的・・とかそんな感じですか? 少々難しい例えに俺は幼稚な思いつきの質問を返す。 「・・いえ、ちょっと違います。・・そうですね・・他人が成した事を、理穏君は簡単にやってのけてしまうわけです。ある意味すごいことですが、やはりは二番煎じ・・と言った感じでしょうか・・・。」 さりげに酷いこと言われてる。 「道路は便利です。人も、自転車も、車も、牛車も全て支え、通してくれます。」 いつの時代ですか? 「その道路を造るのは・・・厳密に言えば道路交通省とかそんな方々でしょうけど、必要としているのは全ての人です。・・ただ、たった1人のために敷かれた道路は・・必要ないのでしょうかね?」 答えは解らない。帳さんはそのままニコニコと微笑んだままストップしてしまった。 つくづく無責任な人だ・・・。
つまりは・・道路は・・まず最初に足を乗せた人が偉いってわけじゃ無いらしい。
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話屋の第4話です。 『B×B』はもう少しお待ち下さい。 次回は、研究所と同時更新です。
4、鍵 【かぎ】
『バキンッ』 錆びた鍵で扉を開けようとしたら根本からバッキリと折れてしまった。 鍵は鍵穴に刺さったまま。 取ろうにもきっちりと造られたその鍵には隙間なんて殆どない。 「あ〜、やっぱり折れちゃいましたか。」 突然現れた帳さんに驚いた俺は後ろに倒れ、盛大に尻餅をついた。痛い。 「そんなに驚かなくても・・・。」 少々寂しそうな顔をする帳さんはやはり演技が上手い方だと思う。 俺が尻餅以上に狼狽えない所を見た帳さんは面白くないですねとでも言いたげに顔をいつもの緩やかなモノに戻す。 ───・・やっぱり・・って事は、前々から怪しかったんですか? 俺がそう聞くと帳さんは「まぁ・・」と曖昧に答えた。 この部屋には何か在るのだろうか。 ただ、「ちょっと整理をお願いします。」と頼まれただけだが、あの返事とかからは何か在るように感じる。 ───帳さん、此処って何の部屋なんですか? 気になりまくっているのを気取られぬ様いつもと変わらない調子で聞く。 ただ、視線だけはどうしても鍵穴からはずせなくて、ずっとそこを凝視した状態だったけど・・・。 「此処ですか・・此処には、いろんなデータが集まってるんです。」 ───データ・・ですか。 割と普通のモノだったことに少々肩すかしを食らいつつ、それをまたもや表情に出さないよう心懸けて、何のデータですか?と聞いてみる。 「・・此処に相談にくる人のお話を記録してるんですよ。ちゃんと整理しなきゃいけないんですけどね・・。」 そう言う帳さんは部屋に入れなくなってしまった事への申し訳なさか、こめかみの当たりを指でカリカリと掻いている。 表情も演技なんかではなく、本当に申し訳なさそうだ。 ───でも・・話に来た人達の話ってあまり良い話とは言えないじゃ無いですか・・。 ───だったら、それを永遠に忘れる・・っていうのは良いことじゃないですか? 頭に浮かんだ、そんな無茶苦茶な俺の言葉を帳さんは否定した。 でもそれは嫌な感じではなく、寧ろ、自分の考えの浅はかさを感じるモノだった。
「・・・『思い』に潰されそうなとき、それを一緒に持ってくれる人が居るのはとても良いことだと私は思っています。だから、私は、少しでも此処に話にくる方の力になりたい。だから、『忘れ』てはいけないんです。」
・・・その日折れた鍵は二度と扉を開けることは無かったけれど。
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| 話屋、100のお題Ver, |
B×Bはもうしばらくお待ち下さい。
と言うわけで、話屋の3話目。 ご感想、アドバイス等、お待ちしております。
3、音楽 【おんがく】
「理穏君って歌得意でした?」 昼食を食べている時、ふと帳さんがそんなことを聞いてきた。 ───何ですか?いきなり。 「いえ、ちょっと気になりまして・・。此処って、本当に無音じゃないですか。だから何も無いときに理穏君に歌って貰おうかと・・。」 無音なのは気になっていたが、それを俺で・・しかもアカペラで解決しようとは・・帳さんも思い切った事をなさる・・。 ───そうですね・・歌は好きですけど・・あまり得意ではないです。 実技教科は技術と体育だけで助けられてきたに等しい。 得意でないと言うのはまぁ、ギリギリラインの台詞だろう。 「じゃぁ、歌を教えてくれませんか?・・・あぁ、歌以外で、楽器とかでも良いですよ?」 交渉術がお上手ですね・・。 後日音楽の授業が行われる事になりました。
───では、店の裏にあった木とポリバケツで、太鼓でもやってみましょう。 仕方なしに俺はリズム感さえあれば何とかなりそうなモノを選び、音楽の授業とすることにした。 そんな下らない授業でも帳さんは笑顔で、とても楽しそうだ。
「ボンボンボン、ボボン!ボン!」
白しかない無音の空間にあまりにも間の抜けた音が木霊・・しない。 音は一瞬耳を通り過ぎ、永遠に続く白に吸い込まれていった。 ───それはそれで寂しいな・・。 「え?どうしました?」 何でもないです。俺はそう答えて、また太鼓を叩き始めた。 叩きながらぼんやり思い出すのは、ついこの間まで一緒に馬鹿やってた友達。 「バンドやろうぜ!!」 なんて、今時な高校生だった俺等は金も、楽器も、センスも何もなく、ただ漠然と憧れて、形として残したくて、騒いで・・・・。 一分一秒が早すぎて、付いていけて無かった。
───その時まで僕らは当然のように過ごす・・・。 ───その時がくるのを知らなかったのように・・・。
いつだか聞いたメロディー・・知らず知らずのうちに口ずさんでいた。 それを聞いた帳さんは小さくこう呟いていた。 「それが・・音楽なんじゃないですか?」
引用・・KNIGHT of NIGHTMARE さんより 空詩
KNIGHTさん、歌詞の引用を許可して頂きありがとうございます。 前々から言っては居ましたが、掲載するにあたって今一度御礼を。
拍手レス ・・名前を載せて良いんでしょうか・・・。拍手だしなぁ・・。 取り敢えず、拍手、ありがとう御座います。 そう言って頂けると僕としてもとても嬉しいです。 話屋、これからも続きますので、どうぞお付き合い下さい。
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第二話、
ご意見、ご感想お待ちしています。
2、椅子 【いす】
───帳さん・・この椅子直さなくて良いの? 『話屋』に来て早一週間、俺はこの店で手伝いをしている。 客としてではなくこの『空間』に来てしまうのは珍しい・・と言うか、前例が無いらしく、帳さんもどうしたら戻れるのか解らない様だった。 「あ〜、それですか・・。直したいとは思うんですけどね・・。」 俺と帳さんが言う椅子は背もたれのペンキが剥げかけ、足が少々ぐらついている店の椅子。正直その椅子を接客に使うのは些か不安だ。 ───機材さえあれば直せると思うけど。 こう見えても技術の成績は良かったのだ。 「そうですか。では、お願いしましょうか。確か工具類は裏にあったかと・・。」 了解。俺はそう言って椅子を担いで外にでた。 外は相変わらず白の世界。 見渡す限りの白、白、白。 しかも色の境目なんて無く、全てが同じ白・・。 ───気が狂いそうだ・・。 俺がそう感じるのも無理は無いと思う。 そんなことを思いつつ店の裏へ回り、工具を見つけ、作業に取りかかる。 よく調べれば椅子は所々金具が錆び、良くコレで保っていたモノだと関心する程だった。 とりあえず、いっぺんバラし、新しい金具に変え、ペンキを塗り、軽くヤスリをかける。 ───よし、上出来・・だな。 俺の感想通り、椅子は見違えるほど綺麗になった。 「あ、理穏君。ありがとうございます。・・あぁ、本当に綺麗になりましたね。」 帳さんも嬉しそうで何よりだ。 「これ、お店を出した時から使ってるんですよ。」 え? 「うん、綺麗になって、椅子も喜んでるでしょうね。」 ・・・。 「どうしました?理穏君。」 ───すみません。ちょっと直し忘れが。 俺はそう言うと帳さんから椅子をひったくり、また店の裏へ駆けていった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 数時間後、椅子は『元通り』になって店に置いてあった。 ───・・何て言うか・・やっぱり、そんな簡単に変えて良い物じゃ無いと思いました。 「・・そうですか。まぁ、何にせよ、綺麗になれて椅子も喜んでるんじゃ無いでしょうか。」 ・・何で俺が椅子を『元通り』にしたのかは自分でもよく解らない。 でも一つだけ、『思い出を消したくない』それだけは、俺の心の中に強く・・強く、残っている。
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